イスラーム研究 月刊『道(タオ)』掲載 
22ラマダン月の断食2

断食にあたっての諸注意
 ラマダン月の間に、意図的に食べたり飲んだり、煙草を吸ったり、どんな相手であろうと性的行為に耽ったり、また、どんなものであろうとも口から体内に入れたりすれば、それまでの断食は無効になります。
 しかし、ふつうの場合では断食を破ってしまう行為でも、つい誤って行なってしまう場合は、その人の行なった断食は無効にはなりません。もし彼が自分の行なっていることに気がついて、その場でそれを止めるならば、彼の断食は有効なままです。
 さて、ラマダンの間は、次の事柄を守ることが強く勧められています。
・夜明け前に「サフール」と呼ばれる軽い食事をとる。
・日没直後にナツメヤシの実を三粒食べ、一杯の水を飲む。
・食事の量をなるべく軽くする。預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は「人がものを詰め込むのに一番良くない場所は胃袋だ」と御話しています。
・人々と互いに訪問し合って交流を深め、人道的な奉仕活動を積極的に行なう。
・『クルアーン』を学び読む機会を増やす。
・最大限の忍耐と謙虚な気持ちを発揮する。
・特別な注意を払って、五感と心と舌を使う。舌については、不謹慎な話や、うわさ話を慎むように特に注意しなければならない。また、疑わしい行動をしないようにする。

断食の効果
 イスラームにおける、断食という崇拝の形は大変に独特であり、その中のどんな部分も他の崇拝の形で表わすことは出来ません。
 イスラームの断食は健全な良心と強い道徳心、また市民としての責任感を創り出します。
 それは貧しい人々に親切にすることを教え、彼等の苦しみや厳しさを喜んで分かち合うことを教えます。また、自分の情欲を抑制することを可能にし、常にアッラーを心に留め、敬愛する心を持つための助けとなります。さらにそれは、人をアッラーに近付け、彼等に偉大な霊の力強さを与えます。
 それゆえに、断食は魂を鍛え、アッラーへの服従に向かう道を容易に作るものです。
 また、ラマダン月の断食は『クルアーン』の啓示が始まった時のことを記念する機会となります。というのは、『クルアーン』の啓示は預言者ムハンマドがマッカからメディナへ聖遷する十三年前のラマダン月に始まったからです。
 断食は社会に大きな影響を与えます。なぜならば、全てのイスラーム教徒はその地位に関係なく同じ月の間断食をしなければいけないからです。このことは人々の間に真の平等感を確実にもたらし、それは彼等の中に敬愛と友愛の気持ちを創り出すに至ります。
 ラマダン月の間、邪悪なものはその身を隠し、善良なものが大きく現われて、あらゆるものは敬虔さと純粋さに大きく包まれます。

義務の断食と任意の断食
 さて、断食には二種類あります。
・ラマダン月に行なわれる義務の断食
・補足的な任意の断食、これは次のような機会に行なわれます。
aイスラーム暦第十月、シャッワール月に行なう六日間の断食。預言者ムハンマドは次のように仰っています。「ラマダン月の断食と、それに続くシャッワール月の六日間の断食を行なった者は、その一年間ずっと断食を続けたとみなされる」(ブハーリ〈編註、ハディースの一つを著した人物〉)
b太陰月の十三、十四、十五日に毎月行なうか、または毎月の任意の三日間に行なうか、毎週月曜日と木曜日に行なう断食。預言者ムハンマドの側近だったアブー・フライラは、預言者の断食は、大抵月曜日と木曜日だったとしています。
c第八月、シャアバーン月に行なう断食。預言者ムハンマドの妻の一人、アーイシャ(アッラーが彼女を御喜びになりますように)は、ラマダン月を別にすれば、 アッラーの御使いはシャアバーン月に最もよく断食されたと言っています。(ブハーリ)
d第十二月、ズ・ル・ヒッジャ月の最初の九日間、特に九日目の断食。〈編註、この日、大巡礼の参加者はアラファト山におもむく〉
e第一月、ムハッラム月十日、アーシューラーの日に行なう断食。〈編註、この日はヌーフ(ノア)が箱舟を離れた聖なる日とされている〉
 この任意の断食については、理由によっては中止することが許されています。
 預言者ムハンマドの妻の一人、ウム・ハーニによると、マッカの街を征服した日、まだ太陽が出ている時に、預言者ムハンマドが彼女の部屋に御入りになりました。預言者は出された飲み物を少し御飲みになり、ウム・ハーニに差し出されました。彼女が「今は断食中です」と言うと、預言者はこう仰いました。「自らの意志で始めた断食は、自らの責任で断食を続けても良いし、途中で中止しても良い」(アハマド〈編註、ハディースの一つの著者〉)

断食における礼儀作法
 断食を行なうものの作法は次の通りです。
・断食の精神に反する行ないを避ける。
 預言者ムハンマドは次のように御話しています。「断食というのは、単に食べ物や飲み物を断つということではない。無駄な話をしてはいけないし、汚い言葉を口にしてもいけない」
 アブー・フライらは次のように報告しています。「おそらく、断食をしている人がそれによって得るものは、空腹を除いた他には何もないだろう。また、おそらく夜中に礼拝を続けている人がそれによって得るものは、不眠以外には何もないだろう」(アンナサーイ〈編註、ハディースの一つの著者〉)
・『クルアーン』を朗唱し、また寛容になる。
 預言者ムハンマドの従兄弟だったイブン・アッバース(アッラーが彼を御喜びになりますように)は次のように言っています。「預言者は最も寛容な方だったが、彼がもっとも寛容になったのはラマダン月の間だった。その間、彼は、毎晩、大天使ジブリール(ガブリエル)と御会いし、『クルアーン』を朗唱されていた」(ブハーリ)
・日の出前の食事であるサフールを、夜明けの少し前にとる。
 預言者ムハンマドは次のように御話しています。「サフールは清められたものなので、たとえ、水を一口啜るだけだとしてもおろそかにしてはいけない。まことに、アッラーと天使達はサフールを取る者達を祝福して下さる」(アハマド〈編註、ハディースの一つの著者〉)
 又、日の出前に行なう早朝の礼拝時刻の直前までサフールの時間を伸ばすことが望ましい。
 預言者ムハンマドは次のように御話しています。「サフールは夜明けのほんの少し前に取りなさい。なぜなら、その時間に食事を取ることには神からの御恵みがあるからである」(ムスリム〈編註、ハディースの一つの著者〉)
・日没後の食事のイフタールを軽く済ませて断食を明ける。
 預言者ムハンマドは次のように御話しています。「イフタールを軽く済ましておく限りにおいて、皆は善というものを持ち続けるだろう」(ブハーリ、ムスリム)
 イスラーム教徒がイフタールに何を取るべきかに関して、預言者ムハンマドはこう仰っています。「もしあなたがたが断食をしているのならば、ナツメヤシの実を食して断食を明けるべきである。もしナツメヤシの実が手に入らないならば、水にしなさい。水は清めになるからである」(アハマド)
・ラマダン月の最後の十日間は、出来るだけアッラーを崇拝する行為を行なう。
 預言者ムハンマドは他のどの時よりも、このラマダン月の最後の十日間に崇拝の行為をしようと励みました。
 アーイシャは、アッラーの御使いは足が腫れ上がるまで礼拝を続けたと話しています。
「あなたは、かつての罪も、近ごろの罪も許されているというのに、なぜそのようなことをするのですか」と彼女が聞くと、預言者は「私がアッラーへの感謝に満ちた下僕であってはいけないのか」と御答えになったといいます。
・イフタールの最中に祈願をする。
 イフタールはイスラーム教徒にとっては非常に貴重な時です。というのは預言者ムハンマドがこう仰ったからです。「断食を行なっていた人の断食明けの祈願は拒絶されることがない」

断食中に行なっても構わないこと
 以下の事は、ラマダーン月の太陽が出ている間でも行なって構いません。
・頭に水をかけること、さらに入浴すること。アッラーの御使いが断食の最中に、のどの乾きや極度の熱さから逃れるために頭に水をかけているところを皆は見ています。
・注射を打つこと。静脈注射でも筋肉注射でも、また、その薬品の味がのどに感じられても感じられなくても問題はありません。ただし、食物の代用となる栄養補給の注射は禁じられています。
・うがいや鼻の中をすすぐこと。ただし、それを大げさにやってはいけません。預言者ムハンマドは「大げさに鼻の中をすすぐのは、断食の最中でない時にしなさい」と仰っています。
・自制出来る場合の自分の妻へのキス。
・目薬の使用や、女性のまぶたを黒く染めるコール墨の使用。
・香水などの香りを嗅ぐこと。
・断食をしていることを忘れて食事をしたり、強制されたり、誤って食事をすること。

 ラマダンについての話は尽きることがありません。しかしながら、誌面の都合上、ここで終えなければいけません。そこで、次のように結論付けたいと思います。
 断食は最高の崇拝の行為です。なぜならば、それはイスラーム教徒がアッラーの御意志に完全に服従していることを表わし、また、アッラーの御命令であれば、どんなに困難なことであろうとそれに従うというイスラーム教徒の意志を表わしているからです。     (続く)

 

     
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